「あれだけの将棋の天才でありながら…」「短い生涯を酒と女に使いきった男」“賭け将棋”で無双したアマ名人の壮絶すぎる44年間!?

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将棋界には、「賭け事」を生業とする男たちがいた。勝ったら1万円、負けたら12万円」といったレートで勝負を繰り返す「真剣勝負の名人」たちは、いったいどんな男たちだったのだろうか。 小池重明は「新宿のヒットマン」と呼ばれ、羽生善治九段も「不思議な魅力を感じた」と言う。アマチュア名人になってからも、小池の人生はトラブルの連続だった(全3回/その1、その2へ)。
貴重な写真】”ギャンブル将棋 “男たちの… “新宿の刺客”、”東海の鬼”、真剣勝負の棋士、10代の羽生善治九段、幼稚園生の藤井竜王がピアノを弾いている写真(全17枚)。
ヨレヨレのパンツで、A級囲碁棋士を倒すことも!
 小池重明が一手で倒した最強の棋士は、1982年に対局した森啓二であろう。当時、名人戦に挑戦していたA級棋士で、小池に敗れた直後に初の棋聖位を獲得した。小池さんは、銀行口座から逃げ回っていて、食べるお金もない状態だった。対局当日、東京の将棋会館に現れた彼は、ヨレヨレのグレーのパンツに、元は白だったのだろう汚いポロシャツ、素足にサンダル履きという出で立ちだった。数日間着替えていないことは明らかだった。その姿を気にした関係者が、試合中にタバコと靴下を差し入れた。
 対局は3回戦で、初戦は角落ち、小池が勝てば次戦は角落ち、小池が負ければ次戦は飛車落ちとなり、ハンデが調整された。一局目は小池が圧勝。二局目も小池の勝ち。3局目は、平手での勝負となった。小池さんが四間飛車、森さんが居飛車穴熊を打つ。紆余曲折を経て、森が小池の攻撃をかわして優位に立つ。森は、あとは小池を仕留めるだけと思っていたが、小池の苦し紛れのポーズをリュウで取ってしまったのが敗因。小池は馬で銀を取って詰めろを打てばよかったのだ。森は、どっちでも勝てると思っていたが、実は毒饅頭を食ってしまったのだ。結局、小池が森の玉を仕留めて逆転勝ちした。
将棋連盟に罰金を払った」というのは迷信である。
 2021年、小池との対局をこう振り返る。”角落ち “は1秒遅かったが、”小池 “は先制してタイトルを獲得した。
2回戦でミスをして逆転負けしてしまいました。本来なら、2回戦は別の日に行う予定だったが、調子に乗って角落ちを続けてしまった。さらに負けが込んでしまい、結果的に平手でやられてしまいました。その日が終わったときに、冷静になればコウシやヒイラテで負けることはなかったと思うのですが、負けたときに冷静さを失ってはいけないのです。
大山会長が激怒して、将棋連盟に罰金を払ったという話をネットで読みましたが、実はそんなことはないんです。実は、そんなことはないのです。むしろ、大山先生は私を優しく迎えてくれました。森君、残念だったね」と言われた。私は、将棋連盟に申し訳ないと思い、対局料の半分を将棋界に寄付することを申し出て、大山会長に受け入れていただきました。
*(NHK将棋講座2021年5月号付録 保存版 別冊!  森敬二ロングインタビュー レジェンドに聞く(2)」)
 第3局の直前、森は小池と練習対局を行い、一手であっさり勝っていたので、負けるわけがないと思っていた。ところが、対局当日、ボロボロの服で現れた小池が、角落ちで逆転負けしてしまい、森は頭にきた。アマチュアプロ棋士が負けてはいけないと思っていたのに、妙に粘り強い将棋を指されると、焦って平常心ではいられなくなったのだ。これがアマチュア・プロ棋士の怖さだ。もし、小池がプロ棋士だったら、森は変なプレッシャーを感じることなく一蹴していただろう。